2015.03.16
投資王に学ぶ思考の「習慣」
アートディレクターのイノウエです。都内はようやく春めいて来ましたが、
飛び交う花粉にスタッフ一同辟易している今日この頃です。
さて、突然ですがご覧の皆さんは投資にご興味がおありでしょうか?
私は。。。自分で言い出しておいて何ですが、さほどありません(汗。
お金に困らない層の経済活動、自分には縁遠い分野かなと思っていました。
しかし引退後の父が積極的に取り組んでいるのを目にするうち、
食わず嫌いもよくないなと思い、入門用の新書をさらう内、興味深い投資家に出会いました。
その人は「ウォーレン=エドワード=バフェット」。
投資業界では有名なこの方、ご存知の方も多いかと思います。
ネブラスカ州に住む今年で84歳になるアメリカ人投資家ですが、
下記をはじめとする驚異的なエピソードを持つことで有名です。
・「純資産470億ドル(円でなく、ドル)」
・「45年間で82万%の投資運用実績」
・「昼食を共にする権利が1億円で落札」
さらに驚かされるのは、彼の出自が大財閥の御曹司、といった資産があるわけでもなく、
幼い頃から投資をはじめ、現在を確立したというのがその実です。
調べてゆく内にもっと意外だったのが、世界を代表する富豪でありながら、
「ぜいたくにはほぼ全く興味がない」
という、相反する生活を送っていること。
食べ物にも着るものにも無頓着、仙人のような暮らしをされていることでも有名です。
一体どうしたらそのようになれるのか不思議ですが、
数万人を集めることで有名な株主総会で発する言葉に彼の行動規範が見えてきます。
ここでは気になったものをいくつか紹介させていただこうと思います。
投資の分野のみならず、ビジネスを成功させる上での一助になれば幸いです。
出典:ウォーレン・バフェット 賢者の教え―世界一投資家思考の習慣 (経済界新書)
「簡単なことをやれ」
大富豪のバフェットといえども成功ばかりではありませんでした。
繊維企業を立ち直らせようと資金と人材を投入し続け20年かけた末、生産部門部門を全て閉鎖、新聞社が利益を出すまで大変なコストをかけたり、紆余曲折の投資人生を送ってきたようです。
それらを踏まえ、明らかに無理とわかる問題と対峙するより、関わらない方がクレバーだと悟ります。
「私たちはある程度の成功を収めることが出来ましたが、
それは”飛び越えられるであろう30cmのハードルを探すこと”に精を傾けたからであり、
2mのハードルをクリアできる能力があったということではないのです」
バフェットは、技術の進歩の早いIT関連銘柄に手を出さないことで有名です。
自分の能力の範囲で選択と集中を行うことが大事だと考えているからでしょう。
自分に置き換えて考えると、プレイングとディレクションという意味での
アートディレクター、という職能にこだわっています。
かつてプロジェクトマネージャーや(広い意味での)クリエイティブディレクターといった
ポジションに誘われることがありましたが、自分がマネジメントに向いているとは思えないのでその一切を断ってきました。
「これは手強い」
「勝てるかどうか不安だ」
と感じたら基本は手を出さないようにしています。
「勝てる勝負しかしない」というポリシーがあるからです。
そのおかげか、随分長くこの職能、この現場に身を置く事が出来ました。
博打を打たず、身の丈以上の「勝ち」よりも、簡単にこなせて負けない確実性を選ぶことも成果を生む手段のひとつかもしれません。
「人は習慣で行動するので、正しい思考と振る舞いを早いうちに習慣化させるべきだ」
バフェットは、自身は投資家であり、ギャンブラーではない。博打は打たない、という規範を持っているそうです。仲間内のゴルフに参加した際、10ドルの賭けでホールインワンを決めたら2万ドル、という話を持ちかけられても断固として拒否しました。
仲間内の遊びとはいえ、自分が大事にしているものを一度破ると、それを繰り返す。習慣の持つ力と恐ろしさを知っているからに違いありません。収入に見合った暮らしを送り、貯蓄に回せた金額を投資に載せ、決めた習慣に沿って生きる、という当たり前のことを徹底した結果が彼の成功とも云えます。
当たり前のことを当たり前にこなす事は意外と難しいものです。
WEB制作の現場ではことに状況がめまぐるしく代わり、瞬時に対応することが求められる事が多く、
メンタル、フィジカルともにいつも「昨日と同じ自分でいることは難しい」と感じます。
そんな時こそ習慣に立ち返り、そこからブレていないかを問いかけることが大事なのだと感じます。
私はデザインやディレクションで迷いが生じた時「はじめにもどる」くせを付けるよう気をつけて来ました。
最初の現場で上司から「デザインに迷ったら、はじめに戻れ」と教えられた経験からです。
この習慣を貫き「最終的にどうなっていれば良かったのか」に立ち返る事で、
難題(化したもの)を解決させることが出来てきた気がします。
仕事でうまく成果が出なくなって困ったとき、順調だった頃は守れていたチームや個人の「習慣」が破られていないか、
その原因は何かを顧みる事で、流れを良き方に導くことが可能なのではないでしょうか?
「なぜ自分は○○○するのか」という小論文を書けないようなら、やめたほうがいい。
最近はネット社会化したせいか処理しきれないほどの情報が飛び交っています。
中には得体の知れない風説や甘言も多く、皆が判断に迷い、誤った方向に進みやすい社会になっていると感じます。
バフェットもかつては他人の目利きに寄り添った銘柄を買った際、
ある大富豪からなぜそうしたのかを問われ、
「ベン=グレアム(アメリカの経済学者、投資の権威)が買ったから」
と答えたところ、
「ワンストライク」
と告げられたそうです。
「空振りだ、坊や。自分の頭で考えるんだ」という意味でした。
その富豪の目つきと表情は忘れられない、と語っています。
知見のないものはとくに、全てを自分で考え、判断するのは難しいものです。
バフェットは、後追い銘柄を当てた実績がいくつもあります。
とはいえ一方で、ただ誰かに便乗することで引き起こされる危険も往々にして存在します。
富豪は若いバフェットにそれを警告したのです。
これを機会に、周囲が首をかしげる銘柄でも研究し、経営陣と分厚いコミュニケーションを
取る事で将来性を見抜き、何倍にも成長させてきました。
「『なぜ自分は現在の価格でこの会社を買収するのか』という題で、
1本の小論文を書けないようなら、
100株も買う事もやめたほうがいいでしょう」(株主総会にて)
小論文は比喩ですが、それを執筆するくらいの姿勢が大事、という事を言いたいのだと思います。
私も日々、チームから上がってくるさまざまなアウトプットを目にしますが、
やはり考え抜かれたものは光り方が違って見える事が多い気がします。
正解=問題解決に至っているかどうかはともかく、納得を促します。
それを手がけたプレイヤーからは「なるほど」と腑に落ちるような回答が返ってくるものです。
逆にそうでないものは、効果も議論も生まない事態が多々あります。
結果を恐れずまずは全員が自分の頭で考え抜くこと、
それによって解決出来る問題はたくさんあるような気がしています。
まとめ
いかがだったでしょうか?
いわゆる一般的な大金持ちへのイメージとはかけ離れたバフェットですが、調べれば調べるほど「まじめな人」という印象です。
まじめはまじめでも「度を超えたまじめ」と言ったところでしょうか。
しかしそのまじめさから生まれる行動規範が、彼の大成功を招いたとも言えます。
発想をシンプルにして、大事にしているものを譲らないことがビジネスや生き方のヒントになるのではと感じています。
バフェットはこれ以外にも身につまされる言葉がたくさんあります。
ご興味の有る方はこれを機会に触れていただければ幸いです。