2014.12.25
デスクを離れ街へ出よう 〜フィールドワーク@赤坂〜
みなさまはじめまして。イノウエです。
Web業界を下から上まで眺めたのち、ご縁あってアートディレクターとして席を置く事となりました。よろしくお願いいたします。ちなみに初めて買ったパソコンはPower Macintosh G3 (Blue & White)でした。ご存知ですか?
私が日々、デザインする上で大事にしているのは「観察力」です。学生時代、先生から、
「本物を観ろ、標本や見本でなく、肉眼で本物を観ろ」
と耳鳴りするまで言われ続けたおかげで、他人が気にしないどうでもいいところを観察するクセがつきました。そういったビジュアルの蓄積が表現する上で役立っている気がします。
そして、見る目を養う上で欠かせないのがフィールドワークです。地学などでの厳密な定義のものでなく、町歩きを通じ、街や人を観察する。何のみどころもない街は無いと思っているので、新しい土地に降り立った際は必ず行うようにしています。というわけで今回は昼食明けの30分限定で赤坂近辺を練り歩いてみました。
赤坂をさっとまとめる
株式会社デモがオフィスを構える東京都港区は赤坂。赤坂と言えば皇居からほど近く、昔から大名屋敷と庶民の街が混在するエリアとして栄えました。現在はかつての面影を残しつつ、外資系企業や迎賓館が立ち並ぶ華やかな大人の街、として有名です。
赤坂見附駅〜みすじ通り周辺
普段、正面か下を観て歩きがちですが、たまに上を見上げてみると面白いものが見つかります。これは街灯に設置された人力車のオーナメント。こういったものは欧米も然り、地域のシンボルが象られることが多いです。かつてはこの通りに富裕層を乗せた人力車が往来していたことが想像出来ます。
とあるビルの鉄扉。ウィリアム・モリス商会に代表されるアーツ&クラフツ運動のクリエイティブを思わせる荘厳な装飾です。経年によって醸し出される饐えた雰囲気が素晴らしい。こういう仕事を観ると、オーナーさんや職人さんが情熱を持って設置に取り組んでいる様子が目に浮かんぶようで楽しくなります。
和風飲食店の玄関に置いてある石臼。個人的に古民具は大好きなので、つい足が止まります。時代が流れても、こうした生活を支えてきた道具は捨てられず、センチメンタルを誘発するのに一役買っているのだと思います。
さらに同じお店にある祝い樽。板を張り合わせて作るのが樽の構造ですが、どうしてこれで水が漏れないのかいつも不思議に思っていました。形態として、試行錯誤を繰り返して機能を確立した美しさを感じますね。
こちらも和風飲食店の玄関で見かけた装飾。限られたスペースの中で、竹林の持つ静謐さを獲得しています。龍安寺の枯山水を同時に連想しました。
みすじ通り近くの壁面ですが、ペイントでブロック塀に擬態しています。毎日通っているのに関わらず、最近まで気づきませんでした。埃や陰影の処理からして、心得のある方の仕事だと思います。
ある裏通りに佇む物置。このイラストはプリントかと思いきや、油性ペン?によって描画されたものでした。ここはそれなりに人通りが多いに関わらず、いたずらに消されたりしていないのに関心します。明らかにプロの仕事と判る、活き活きとした仕上がりがそうさせるのかもしれません。
日枝神社
江戸三大祭の一つ、山王祭で有名な日枝神社。平日の表情をのぞいてみました。クリスマスより一足早く新年の準備が進んでいるようです。外堀通りをを挟んで現れたのが、あのわたせせいぞうさんの大判イラスト。モチーフから察するに、神社のためのオリジナル作品のようです。皇城の鎮・日枝神社もわたせさんにかかるとがさわやかにまとまりますね。
神社の塀に納められている、お神酒(?)の樽。日本中の酒造メーカーから寄せられた樽が整然と並んでおり、観ていて飽きません。どのメーカーも商品名のストロークの美しさに目を奪われます。
中でもひときわ目を奪われたのがこちら。基本を抑えつつ、ストローク、オーナメント共にルールがあり、全体的にモダンな仕上がりです。この酒樽シリーズの中で一番記憶に残る、こだわりが伝わるデザインでした。
帰社
時間になりフィールドワーク終了、と言いたいところですが、デモ社内にも見所がたくさんあります。中でもこの盛り塩は欠かせません。我々のようなイノベーションを生業とする企業でも、こうした日本古来からの縁起担ぎのようなことを忘れないのが大事だと思います。
最後に、オフィス玄関のCI(コーポレート・アイディンティティ)をご紹介。本日はクリスマスということで、ご覧の通りのデコレーション。昔はよく「CIで遊ぶな!」と先輩デザイナーから叱られたものですが、こうしたポジティブなあしらいによって社内外に話題をもたらす使い方はきっとアリなのだと思います。
徐々にまとめに入る
今回はお昼の30分ということで局所的なフィールドワークでしたが、かつての赤坂のイメージが変わるくらい、たくさんの発見がありました。様々な人が行き交い、時間が蓄積する場所だからこそ、何のみどころの無い街を探す方がきっと難しいです。今度は別のルートでまた歩いてみようと思えるひとときでした。
WEBデザインという仕事において、表情豊かなクリエイティブを生み出すには分野に固執しすぎないことがひとつポイントではないかと思っています。それはデジタルにこだわりすぎず、視野を広く持ち、生活を楽しむことで培われる気がしています。煮詰まったり、一皮剥けたいデザイナーの方がいらっしゃったら、デスクを離れ街へ出る事をおすすめします。目の前の風景をちょっと変えることで、思いもつかない新たな気づきが生まれるかもしれません。